【美輪明宏】日本のファッション界について語る
今日はファッションについてお話させていただきたいと思いますけど
私は終戦後ビジュアル系の元祖として、自分でデザインして男でもない女でもないという格好で出て、自分の着るものは全部自分でデザインしてたんですけども
製作の方はやっぱりジュエリーのデザイナーの方の工房で作ってもらいますんで、自然と知り合いになれるんですよね。その方たちのものも着ますし、いろんなデザイナーの方たちともお話させていただくことも多かったんですけどね
もうずいぶん昔になりますけど、ピエール・カルダンが最初に日本に来た頃でしたね。ある新宿のクラブみたいなバーで、モデルさんと一緒に来てましたね、彼は。それで日本の通訳をやってた女の人もいて。わたくしその女の人と知り合いだったもんですからね。話をしてて。ちょっとおつまみなんかを食べたりなんかしてましたらね。
その時に日本の美意識とかファッションをどう思いますかって聞いたら、世界一ですって言ってたんですね。我々フランス人が世界一だと思ってたけど、日本の平安時代からの多彩な色そしてデザインとか、そして紋所のデザインとか。そういうものが歴史をずーっと調べてみると、もうとてもじゃないけど、日本人の美意識は世界一だと思いました。
そう認めてくれてて、さすがは大物だなぁと思ったんですけどね。
あの人がオート・クチュール(高級注文服)だけだったのを、そうじゃなくてプレタポルテ(高級既製服)で、誰でもが一流のデザインのものを、適当な値段で着られるというシステムを作り出したんですよ。
なかなか実業家でもあると思いましたけどね。向こうの人たちはそうでもないんでしょうけども、ただ日本のデザイナーたちでも、名前は挙げませんけども、周りの人が鼻持ちならない人が多いんですよ。世界を動かしてるのは、俺たちだ、私たちだ、みたいにね。それで大時代的な、総理大臣か何かになったつもりの、そういう錯覚を起こしている人たちが多すぎますよね。
ですから、なるべく私は近づかないようになったんですけどね。向こうがやっぱり、わたくしがなまじ名前があるからって言って、コンタクトしていらっしゃるんですけど、もう今は逃げ回って、どなたもいらっしゃらなくなりましたけどね。
その点、ワダ・エミさんなんてアカデミー賞を獲った方で、わたくしのお芝居をよく手伝ってくださってデザインしてくださるんですけど、あの方は立派ですよね。なかなか素敵だと思いますよ。
あとはそうですね。今私がずっと来てるのは、イッセイ・ミヤケのものを長い間。便利なんですよ。洗濯もちょっと汚れると、水で洗うと落ちますし。小さく縮むから旅行に行くとき便利ですし。どうにでも自由自在に、いろんなもの合わせて着ることができますし。
ですから便利だし、無駄が無いし、ということでミヤケさんのものを長い間着てます。
TBSラジオ『薔薇色の日曜日』2016年12月4日放送分より