【美輪明宏】悩まないコツについて語る
さて今日は悩まないコツについてお話させていただきます。先だって芥川賞作家の又吉さんにうちへ来ていただいてお話をしたんです。本の対談でしたけれど、その時にいろいろ話をしていて、悩まないコツっていうのはなんだろうっていう話になったんです。
あの方は太宰治や中原中也がお好きなんですけど、あの人たちは悩みの塊みたいな人たちでしょ。ケチつけるわけじゃないけど、悩むというのは考えるということと違うんですよ。物事を解決したり究極に追い詰められた時に一番邪魔になるものは感情なんです。情念。
解決するにあたって一番必要なものは何かというと、あくまでクールで冷静に考えるという思考能力です。それをちゃんとを振り分ければいいんです。
感情の使い方って難しいですけど、楽しいこと嬉しいこと喜び事であるとか、ロマンティックな気分に浸って、音楽を聴くとか、美しい絵を見るとか、映画を見るとか、良いお芝居を見るとか、そういった叙情的なものに身を任せたり何かするときには感情を全開にすればいいんですよ、情念・情緒を。
ところが今度は追い詰められた何か事件の時、解決しなきゃいけない時に、「はぁー」っとため息をついて、喚いて泣いて嘆いて酒を飲んで、朝目が覚めたら何か解決しているかっていったら、何にも解決なんかしてないんです。
感情的にならない!
解決する方法をあくまで冷静になって、お酒も飲まないで、ため息もつかないで、クールに、こういう問題を解決するにはどういう方法があるか。Aプラン、Bプラン、Cプラン、いろんなプランがある。突き詰めて、多角的な方法を。じゃあ、あの人に頼んで、あの人のつてでこういうふうにやって、自分がこういうふうにやればどうなんだろうか。こういう方法がいい、その方法はダメ。セレクト(選択)して冷静にずっと考えていくんですよね。決して感情的にならない。
そうすると問題がどんどん解決に近づいていくんです。それが悩まないコツなんです。悩むために悩んでるみたいな人が結構多くて、そりゃ無駄なエネルギーになるからおよしなさい、もったいない。エネルギーを別のことに使えばいいんだからと言ってるんです。
どっちにしても人間は悩むように出来てるんだけど、そうい時は開き直りですね。どうせ短い一生だし。人久しといえども百年には過ず 真間の事は但一睡の夢ぞかし。日蓮上人の言葉がありますけど、ジタバタしたって100年以上は生きられないんだし、その間のことは夢みたいなものだから、あわてて泣いて嘆いては馬鹿馬鹿しいということで。
何百社傘下に収めたいとか、無駄なことはしないことです。大きい会社をいっぱい作るのはいいでしょうけれど、でもそれは会社が一人歩きして自分のものにはならないんですよ。誰かのものになっちゃうんです。自分が死んでしまったら。
ただ働き。骨折り損のくたびれ儲け。いくら財産を残しても誰かのものになるんです。財産持ってあの世に行けるわけじゃないし、えんま様に手みやげで賄賂を配るわけにいかないんですよ。
そこで冷静にに考えると、慌てずゆっくり西郷どんみたいに。「急くな騒ぐな天下のことはしばし美人の膝枕」っていうふうに開き直れは楽になるんです。
美輪明宏 薔薇色の日曜日」2017.3.19 より
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