【美輪明宏】岡本太郎の人柄について語る
大阪にございます万博記念公園の太陽の塔の内部が現在公開中なんですって。へぇ、どんな中なんでしょうね?ちょっと見てみたいですね。と申しますのは、あの太陽の塔をデザインなさったのは、あのアーティストの岡本太郎さんなんですね。岡本太郎さんて若い方はご存じないかなぁ?
岡本かの子という女流作家がいまして。三島由紀夫さんが大変褒めていらした方なんですよ。岡本太郎さんのお父様のほうは、岡本一平といっても画家というより風刺画のような漫画をお書きになる方で、粋な時代の代表のような方でしたね。
岡本太郎の人生
そこまではいいんですけど愛人を岡本かの子さんは家の中へ引き入れて、そして三角関係で過ごしていらして、岡本一平というご主人も平気の平左でそれを楽しんでいらしたみたいです。何かフランス映画みたいな感じなんですけどね。
そういう中で育ったんで、岡本太郎さんも定めし変わった方だろうというふうに、お目にかかるまでそう思ってたんですね。ところが、私あの銀巴里というランシャンソンのライブハウスには上野や多摩美や武蔵野の美術学校の方もいろいろ有名無名いらしてたんですけど、そこに岡本太郎さんもいらしたんですよ。
フランスに留学がしてたこともあって、フランス語が達者でらっしゃるんでフランス語が喋れなくなって、フランス語に飢えてるんだと言って。時々フランス語でシャンソンを歌いに銀巴里にいらして。飛び入りも歓迎だったんです。その頃はね
そしたら「僕にも歌わせて」って、可愛らしくおっしゃて、そして「どうぞ」って言ったら流暢のフランス語でお歌いになって。「はぁ清々した」ってお帰りになるんですよね。
北海道の札幌へ講演のスピーチの仕事で2人一緒だったんですよ。1泊旅行で行って。その時にあのコマーシャルで見ると皆さんあの気難しくて「芸術は爆発だー」って言って。人嫌いでわがまま勝手で、怖い人だという風な印象をお持ちだろうと思うんですけど、全く違うんですよ。
礼儀正しくて、優しくて言葉遣いも丁寧で。いろんな芸術家の人って、人の作品はボロクソにおっしゃる方が結構多いんだけども、そういうことがなくて。そして酔っ払った取材の一人の人が絡んだんですよ。「僕はあなたの毒々しいあの色使いには反吐が出るよ」って言ったんですよ。そしたら「ああそうですか。まあ、あなたはそれでいいんです」「人はそれぞれですからね。審美眼は」って言ってニコニコ笑いながら全然相手になさらないのね。それで「わぁ大人だなぁ」って思って。
「美輪明宏 薔薇色の日曜日」2018.4.1 より)