【美輪明宏】最近のレコードブームについて語る
さてさて、まだまだ芸術の秋でございますけれども「秋深し となりは何を する人ぞ」。秋は色んな歌もございますし、芸術にふさわしい秋なんですね。汗が出ませんからね。
私とっても嬉しいニュースを聞いたんですけど、なんでも最近の若い人たちの間で、レコードがブームになってるって言うんですよ。
レコードって言いますと、若い方はご存じないでしょうね。CDって言ったら分かるかもしれませんけど、レコードって言ったら何って言う人もいるかもしれません。
レコードはちょっと分厚くて3,4ミリ厚みがありまして、そして落とすと割れますし、そして針が必要なんですよね。今みたいに版を突っ込んじゃえばおしまい。勝手に音が出るって言うんじゃなくて、いちいち針をその溝に置かなきゃいけないんですよね。
そのレコードプレイヤ―の形がファッショナブルで、レトロで。あれは一つの文化ですよね。
それからLPレコードにしても、ドーナツ版の小さなレコードにしても、情報量が多いんですね。ですから不思議なことに、当時の空気。空気感ですね。時代の空気感。そういうものも録音されてるんですね。これは不思議ですね。
CDの方はどっちかと言いますと、そういう空気管とか余計な音を一切削ぎ落としてあるんで、本当に音だけなんですね。
やっぱり音って言うのは音波で、波ですからね。その豊かな波がそぎ落とされちゃって、全部ハーモニーしててもキンキン、シャンシャンするんですね。
ですから長い間、交響曲とか聞いても、マーラーとかいろいろございますでしょう?そういうものを聴いてると疲れ果てちゃって、神経が逆に慰められるよりイライラしてくるんですね。
特に叙情的な歌とか1920年代、30年代の男の歌い手さんの柔らかい、透明なふわーっとした声で、ああいうものなんかは「えっ!嘘でしょ?」って具合にガラッと変わっちゃいますしね。温かみが削がれちゃうんですね。バイオリンの音でもフルートの音でも、「えっ、こんなキンキン言ってたかしら?」って言うくらい。
最近の若い人たちも、耳が疲れるってことが分かってきたんですね。それでいろんな種類のレコードプレイヤーが各社から出てるんだそうですね。
私もそのうち、買いに行こうと思ってます。
TBSラジオ『美輪明宏 薔薇色の日曜日』2014年11月16日放送分より
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