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美輪明宏の発言まとめ

【美輪明宏】エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』と『イワン雷帝』について

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今日は珍しいお話をさせていただきましょうね。ロシア映画についてお話させていただきます。と言ってもね、今のロシア映画じゃございませんよ。昔、昔でございまして、当時はまだソ連領でございましたね。ソ連ですよ。もう古いですね、そのお話ね。

 

戦前からソ連は国を挙げて、なんと映画を作ってまして、映画を国の宣伝に使おうとして力を入れてたんですね。今日はその中でも素晴らしい、世界的に有名で、ロシアの映画監督としてはピカイチですよね。こういう方は他にもいらっしゃいませんけどね。セルゲイ・エイゼンシュテインという、無声映画の頃からの名監督がいらっしゃいまして、これは今でも見られますんでちょっと探しでご覧になるとございますよ。

 

 

この方は映画監督としては理論家でして、モンタージュ理論という、当時の映画界で有名な理論を確立なさった方で、映像の革命を起こした人なんですよ。分かりやすく申しますと、観客の感情を操作するための編集のテクニックなんですね。これは素人さんが動画をお作りになるときの参考になるかと思いますけどね。

 

例えば、同じ表情の顔を映しても、その前後のカットによって意味が変わってくるということなんですね。例えばお葬式のカットの後なら悲しいカット。食べ物の後だったら腹ペコに見える。つまり人観客の意識を全部計算に入れながら撮るんで、自分のこういうふうに撮りたい、ああいう風に撮りたいという欲望だけで撮っている監督じゃないということです。

 『戦艦ポチョムキン』『イワン雷帝

この方の『戦艦ポチョムキン』という1925年の作品でサイレント映画、まぁ無声映画ですけどもね。これはロシア革命当時に起きた反乱事件がベースになってまして、蛆虫を入れたスープに怒っちゃった水兵たちが上官に暴動を起こすんです。軍艦の中で。それが次第に革命につながっていくんです。

 

そして一番有名だったシーンはオデッサの階段という階段がございまして…石段ですけどもね。そこでみんな人々がワーッと逃げまどうんですけど、ものすごい群衆なんですよ。そしてそこで母親が死んじゃうんですよね。その母親が推していた乳母車、赤ん坊をいれたままですよ。それが勝手に階段をどどどどどと降りていくんです。もう見ている観客は総立ちですよ。もう、どうなるかって。そういうテクニックを使った人なんですね。

 

あとは『イワン雷帝』と言ってイワンという有名な皇帝ですね。この人の第一部、第二部と映画を撮っていまして、ロシア史上初めて皇帝と名乗ったイワン4世を描いてましたね。西洋歌舞伎のようなものすごい衣装で、「え?これどうやってつくったんだろう」というような豪華絢爛な衣装で、もちろん黒白ですから色は見えませんけど、大変手間とお金のかかった衣装とセットで。セットって言うのは、あれはセットじゃ無理だと思います。豪華すぎて。めちゃくちゃ豪華な宮殿が出てくるんですね。それが中国や日本の歌舞伎のような見得を切った芝居をするんですね。それがまたぴったしで。

 

それで一部と二部で、それで2分で最後の方に何といきなりカラーになっちゃうんですよ。それがまた計算がぴったしハマってるんで、お客は「あっ!」と思って、それで帰ることになるという。

 

どうぞ日本やアメリカの映画だけじゃなくて、いろんな国の映画を機会があったらご覧いただくと良いと思います。そうすると人生がまた楽しくなります。

 

TBSラジオ美輪明宏 薔薇色の日曜日」2015年放送分より

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