【美輪明宏】イタリアのテノール歌手、ジュゼッペ・ディ・ステーファノについて語る
今日はわたくしの大好きなオペラ歌手を紹介させていただきたいと思います。ジュゼッペ・ディ・ステーファノという男の方で、声のキーはテノールで。テノールでも、いろんなテノールがいるんですけど、この方はだいたい何でも来いなんですね。オペラから民謡から、歌謡曲みたいなものまで歌っていますからね。戦前、戦後に大活躍した伝説のテノール歌手でございます。
この方は生まれは1921年ですから、大正時代ですね。ですから私より14歳年上っていうんですから、亡くなりました三島由紀夫さんなんかと同じくらいでしょうか。2008年86歳でお亡くなりになったんですね。
日本に参りまして、1974年でしたから、もう40年にもなるんですね!私はついこの間のような気がしましたけどね。それもひとりでお見えになったんじゃなくて、オペラの女王と言われましたマリア・カラス。問題の伝説的な大ソプラノ歌手です。そのマリア・カラスがステファーノのことが大好きだったんですね。声も曲の解釈の仕方も素晴らしかったんですけど、何よりもとってもハンサムだったんですね。イケメンだったんですよ。
それでマリア・カラスは気難しい人なんですけどね。そこいらへんの人とは絶対組まないような人なんだけども、ステファーノだけはとってもお気に入りで、そしてずーっと日本全国をコンサートで回った時も、ステファーノと一緒だったんですね。
とにかく普通、中低音が苦手なテノールが歌手って言うのがいるんですね。高い方は得意なんだけども、中音とか低音は急に音が細くなったり、苦しそうになったりするんですけど、ステファーノは低音とか中音も堂々と音を出すんですね。
それがやはり、美しい響きで中低音をだすんで、他のテノール歌手とは違った扱いをされたのは、まぁ当然だと思いますね。
イタリア民謡風なもので、ある有名な詩人がおりまして、その詩人にお金を貸して、その代償として、その詞にこの曲をつけた。それは作曲家の方のいろいろと事情があったみたいですよ。それはそれで面白いと思います。
お金の形(かた)に作った曲って言うのも、おもしろいお話でございますけど、ちょっとイタリア民謡風な匂いのする歌でございます。
TBSラジオ『薔薇色の日曜日』2014年9月28日放送分より