【美輪明宏】テレビ放送開始時の思い出の人たち―吉田茂、伊藤絹子、トニー谷、花菱アチャコについて
それから世間を騒がせたニュースと言いますと、吉田茂さんっていうブルドッグを怖くしたような首相がいまして、「バカヤロー」って言ったもんですから、議員たちが全部怒りだして、それで責任取らされて、バカヤロー解散ということになったんですよ。
失言というのはこの頃からあったんですね。今はもう失言失言で、議員や首相がそれで辞めるのは珍しくなくなりましたけどね。そういうものもございました。
ファッション・モデルでは伊藤絹子という人が敗戦後、日本人で初めてミス・ユニバースに選ばれまして、第3位だったんです。八頭身で、今のモデルみたいにカリカリに痩せてるんじゃなくて、ウェストか足首とか細いところは細いんですけど、大人の成熟した体で、ふっくら肉がついててバランスが良くて。
私がシャンソンを唄って、有名な文化人の中原純一さんが主催で、中原淳一さんの作品をモデルさんが着て、伊藤絹子をはじめとして当時の有名なモデルはいろいろいたんですけど、それと全国を回ったりしてたんですよ。懐かしいですね。
ミス・ユニバースで3位。これは日本人がみんな寸胴で足が短くてスタイルが悪いって言うコンプレックスを一気に吹き飛ばして、日本女性に希望を持たせたんですよ。
当時の人気芸人
それから芸人ではメガネをかけて、ちょび髭のトニー谷という人が、インチキ英語と、わけの分からないそろばんを持って、それを叩いて拍子をとりながら、「ざんす ざんす さいざんす」って。昔の上流社会の山の手の婦人なんかが「さようでございます」なんていうのを「さいざます」とか、家族の人とかは「さいざんす」とか、そうじゃない人でも「さいざんす」って。これは気取った奥様方の使う言葉なんですけど、それをモジってからかって「さいざんす」って言ってて、それが流行語になってんですよ。
あと花菱アチャコさんていう関西のNHKのテレビにも出ていらっしゃいますけど「むちゃくちゃでござりまするわ」って言って両手を振りながら変な歩き方をなさるんですよね。欽ちゃんがそれを踏襲してましたですね。まあ、そういう時代でございました。
TBSラジオ『薔薇色の日曜日』2014年11月30日放送分より
