【美輪明宏】タンゴの魅力について語る
今年は日本のタンゴ伝来からちょうど100年の年だとか。タンゴというリズムの曲ですね。「♪チャッチャッチャッ ズザチャッチャッチャッ ズザチャッチャッチャッ…」ってのがタンゴなんですね。「♪ズンダッタ ズンダッタ ズンダッタ…」これがワルツです。「♪トントトントン トントトントン…」これがハバネラというリズムなんですね。
というふうに昔はリズムが全部違った音楽が次々とかかってて、変化があったんですね。ですからこのタンゴが日本に入ってきた時にみんなびっくりして、たちまち飛びついたんですね。だいたい100年前、大正3年ですか。1914年ごろだというふうに言われておりますけどね。
タンゴの魅力は男女二人が組んで、ぴったしくっつくどころじゃなくて、下半身を密着させたりするんで、昔はこれは、港町の娼婦と船員さんとかが踊るもので、大変下品なものだということで、タンゴというのは普通の社交界では全く受け入れられなかったものなんですね。
それが今では、タンゴというと、「えっ、タンゴ踊るの?」と上品なものみたいになりましたけどね。とにかく踊りやなんかも、横のスリットなんかが空いた足をむき出しにしちゃって、それで曲芸みたいな足の運びなんですよ。難しくて、足を絡ませたり腰を密着させたりして。それで不謹慎であるとして、戦争中は禁止されたんですね。タンゴを聞くこともダメだったんですよ。レコード聴くのもダメでした。
終戦後になってバーッと解禁になって、「それ」ってことで、日本でも早川真平とオルケスタ・ティピカ東京というタンゴバンドが藤沢嵐子さんという人とタンゴバンドを作って、それがもう大当たりで。終戦後のアルゼンチンにも招かれて行きまして、日本の誇りだっていうことで、当時の日本人はそれからすごく勇気を得られたんですね。
それぐらいタンゴというのは色んな歴史やエピソードがあって、それが今忘れられてるのが大変残念ですね。
フランシスコ・カナーロ
その中のひとりでフランシスコ・カナーロ。フランシスコ・ザビエルみたいですね。フランシスコ・カナーロというバイオリニストで作曲家で指揮者でもあって。自分でバンドも持ってらして、ウルグアイ生まれのアルゼンチン育ちです。
アルゼンチンの大都会ですからね。そこで育って、1920年代、あの黄金の20年代にフランスやアメリカの他、世界中で演奏旅行を行って、タンゴがワーッと流行するのに拍車をかけたんですね。
やっぱりカナーロの単語の魅力はメロディがシンプルなんですね。とっても覚えやすくてロマンティックな美しいメロディです。
やはり音楽はメロディですね。今みたいにメロディ不在の音楽なんて音楽じゃありませんよね。
「美輪明宏 薔薇色の日曜日」2014年10月26日放送分より