【美輪明宏】フランスの歌手、ジュリエット・グレコについて語る
今日はフランスの歌手、ジュリエット・グレコについてお話させていただきたいと思います。
これは終戦直後でございますけど、パリでデビューした女優で、歌い手なんですけど。先ほど申しましたように現在87歳。それで今月日本でコンサートを行います。
あぁ懐かしいですねぇ。髪が長くて、そしていつも黒いピッとした衣装を着てまして、舞台もそうでしたね。私はパリでも見ましたけど、やはり黒の長いドレスで、そして動きに無駄が全部ないんですよね。本当に必要な洗練された動きだけ。それは見事でしたね。
そしてあまり説明的ではなくて、そうかといって踊りでもない。歌の邪魔にはならない、歌を助ける。そういう動きをする人ですね。ぜひご覧いただきたいと思いますけどね。
代表曲『パリの空の下』『枯葉』
代表曲は『パリの空の下』。古い方は懐かしく聞いていただけると思いますけど、「私は日欧日が嫌い」っていう、これも面白い歌ですね。そして『枯葉』「Jolie môme」Jolie mômeっていうのはきれいな女の人って言う意味で、娼婦のことを言います。とても面白い風刺のきいた歌ですけど。
出演映画はジャン・コクトーの『オルフェ』。そしてイングリッド・バーグマンって名女優が出てた『恋多き女』。いずれも脇役ですけどね。そして『陽はまた昇る』に出演した大女優のエヴァ・ガードナーの映画『悲しみよこんにちは』というフランソワーズ・サガン原作の映画にも出ておりましたね。
この『枯葉』という曲を彼女はお得意なんですけどもね。これはイブ・モンタンが出演しました映画の中で歌ってたんですけど、それが大ヒットしたんですね。
パリでは同じ曲を全部違った歌い手さんが歌って、それで平気だったんですね。当時の日本では考えられませんでしたけど。
そして終戦直後、『枯葉』が日本に入ってきたのはジュリエット・グレコのレコードの方が最初だったんです。なんかアンニュイというか気だるい歌い方で、好き好きもありますでしょうけど、私は大好きでしたね。
シャンソンの評論家がいまして、その人にジュリエット・グレコを紹介されたことがありますよ。まだ私がボーイッシュな格好をしてた時ですから、きっと印象に残ってないでしょうけどね。
今の状態だったら一遍で覚えられますでしょうけどね。
TBSラジオ『美輪明宏 薔薇色の日曜日』2014年9月14日放送分より