【美輪明宏】アール・ヌーヴォー、アール・デコという芸術様式について
ラジオネーム、ルイ十兵衛です。私の薔薇色の時間は休日の美術館巡りです。今度美輪さんもお好きだという美術館、東京都庭園美術館に行って参ります。今はフランスの芸術家エミール・ガレの展覧会が開かれているようです。ぜひ美輪さんにエミール・ガレや昔の芸術様式のお話などを伺えればと思います。
日本人の男の方でこういう芸術・文化に興味がおありの方って相当な方ですね。さて、そのエミール・ガレなんですけど、アール・ヌーヴォー様式なんですね。私も大好きなんですね。エミール・ガレの壺も一つぐらい持っていたと思いますね。
花や昆虫といった自然をモチーフにした焼き物、ガラス工芸品ですね。某局で骨董品のセリで値段をつけてもらう番組がございますけれど、ときどきエミール・ガレのものもでてまいります。大変なお値段がついておりますけどね。
アール・ヌーヴォーっていうのは、アール・デコの前の様式なんですね。アールって言うのは「芸術」、ヌーヴォーっていうのは「新しい」っていう意味なんですね。だからアール・ヌーヴォーって言ったら「新しい芸術」って意味なんです。
これは、錦絵とか浮世絵といったいろんなものが、万国博覧会で日本から向こうへ紹介されましたでしょう?その前から日本の陶器が輸出されてたんですね。ところがその頃は、新聞紙なんてございませんから、陶器の包み紙として錦絵や浮世絵を利用してたんですよ。豪華な話ですけどね。その当時は、ちょっと見て飾って飽きたら捨てるみたいな状態だったんでしょうね。
歌麿であるとか北斎であるとか、そういう人たちの浮世絵が、向こうの方へ包み紙として渡って、それをたまたま目にした美術商とか、そういう人たちが大騒ぎして、価値がどんどん上がって、もてはやされるようになったんです。それでゴッホだとかゴーギャンだとかロートレックだとか、ああいう巨匠たちの目に留まってものすごい影響を与えたんですね。
これを何とか取り入れられないかということで、創意工夫しまして、本当に美しい様式美になりまして、アール・ヌーヴォーという美の様式が出来て、一時代を築いたんですね。
その後にできたのが、今度は余計な装飾を全部そぎ落として、必要な装飾だけを残したアール・デコというのが1900年代の初頭から始まりました。
今、この方がいらっしゃる東京都庭園美術館が特集しているのが、このアール・デコでございまして、これもなかなかシャレてて、ルネ・ラリックっていうガラス工芸者の親分がドアのガラス。素晴らしいガラスの彫刻を作っています。それもお楽しみいただきたいと思っております。
TBSラジオ『薔薇色の日曜日』2016年2月14日放送分より