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【美輪明宏】文化が思いやりを作り出す。ポール・ベルレーヌの『落葉』

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今日は私の大好きな詩、ポエムをご紹介させていただきたいと思います。人間にとって最も大切なのは思いやりですね。思いやりはどこから出てくるかって言ったら、想像力から出てくるんです。

 

 

その想像力を鍛えるのが、詩や絵といった文化なんですね。「青い空」って言ったら、たった三文字。これを頭の中で塗り分けるんですね、塗り絵のように。プルシアンブルーだとかセルリアンブルーだとかにね。ターコイズブルーだとかいろんなブルーがあるでしょう?人それぞれの性質とか体験とかがありますからね。

 

雲って言ったら羊のような形の雲であるとか、入道雲であるとか、鰯雲であるとか。いろんな雲の形がありますね。それで、その雲の端っこに虹色のちょっと色がついているとか、ついていないとか。とにかく、それは雲というだけで頭の中で形を想像して、宮沢賢治の『風の又三郎』の中で「どうどうどう」という、水の匂いであるとか、風の音であるとか、そよぐ草々のざわめきであるとか。それを居ながらにしてタイムスリップして、眼を閉じさえすれば、その中にスポーンと入っていけるんですね。

 

それが想像力で、つまり心の癒しになるということですね。

 

やっぱりお若い方なんかは、あんまり難しい新体詩とか何とかいうよりも、簡単なもの、甘いものから入ったほうが想像しやすいですね。例えば大正の大天才、竹久夢二の『宵待ち草』であるとか、島崎藤村の『初恋』という詩であるとか、室生犀星の「ふるさとは遠きにありて思ふもの」とか、これもいい詩ですよ。あとは中原中也の『汚れっちまった悲しみに』などなど。これも胸がキュンとなるような詩でございますんでね。

ポール・ベルレーヌの『落葉』

ここで、その一つで日本の作家じゃありませんけど、これはポール・ベルレーヌという。この人はランボーという素晴らしい若いハンサムな詩人がいて、その人と同性愛で愛人同士だったんですね。それで大スキャンダルになって、嫉妬して刃傷沙汰をおこしたりとかスキャンダルチックな方ですけど。でもこのポール・ベルレーヌは甘い素晴らしい詩をたくさん書いています。

 

上田敏さんという、これは名訳ですね。訳詞者として素晴らしい。あの堀口大学さん、この方と上田敏さんの両巨頭ですよね。ここでは上田敏さんの方の訳でお届けしたいと思います。ではポール・ベルレーヌの詩で、上田敏さんの訳でございます。

 

これは「らくよう」という読み方もありますし、「おちば」という読み方もありますけども、内容から言いますと「らくよう」というのでしたら、もっと硬い文体でなければいけないんですね。そういう硬い文体ではございませんので、非常に女性的な文体ですので、「おちば」の方がぴったしだと思いますね。では読ませていただきます。

 

秋の日の ヰ゛オロンの ためいきの

身にしみて ひたぶるに うら悲し。

鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて

涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや。

げにわれは うらぶれて ここかしこ

さだめなく とび散らふ 落葉かな。

 

『落葉』フランスの詩人、ポール・ベルレーヌの詩、上田敏さんの訳でございまして、秋の日の非常にロマンティックな心象風景を歌った素晴らしい詩をお届けさせていただきました。

 

TBSラジオ美輪明宏 薔薇色の日曜日」2013年10月放送分より

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